編集後記 「変わらないものの美しさ」

7月初旬、嫁と嫁の両親・姉夫婦と共に一泊二日で箱根に行ってきました。時間的にタイトで体力的にはきつかった部分もありますが、温泉につかり、箱根の自然を眺め…リフレッシュできました。
ただ、心から箱根を満喫できたか、というと、正直疑問が残ります。というのも、今回泊まった宿は私と嫁、そして両家の家族一同かなりお気に入りのところ。そこがリニューアルオープンしたということで、期待に胸躍らせて向かったのですが…残念な結果。
38_s1.jpg生まれ変わった宿、基本的にはいい宿だと思います。仕事柄わかりますが、旅行ガイドなどではいい評価を受けそうな条件が揃っていました。揃っていましたが…何かが違う。大浴場は、今時なすっきりとしたデザインに仕上げられ、寝湯など最近の温泉施設の流行も取り入れられていましたが、そういうものが妙に目立ち、どこか落ち着かない。料理も素材にこだわり、バラエティーに富んだメニューを提供してくれましたが、あまりに料理数が多い。なので一品一品をじっくり楽しめない。「広く、浅くはないけれどほどほどにおいしく」。そんな印象でした。
38_s2.jpg“メジャー”――不特定多数の人に一定の評価を得る――そういう宿に生まれ変わっていました。
以前は小規模で、設備的に最新とは言わないけれど、施設、料理など、一つ一つに心がこもり、お客がしっかりと納得できる要素がギュッと詰まった湯宿でした。なので知る人ぞ知る箱根の宿として密かに人気を博していたのですが…そういう要素は、ほとんど残っていませんでした。
でも変っているのはその宿だけではなかったようで、帰りの車中、箱根の町が微妙に変わり始めていることに気付きました。塔ノ沢、宮ノ坂、強羅など箱根の湯宿情緒があふれる一帯はいたるところで建設中の建物が目立ち、中には大型リゾートホテルの様相のものも見られ、雰囲気が変わっていきそうな兆候が。箱根湯本の町並みも、よく見ると微妙に色彩が変わっており、目新しい飲食店や商店が所々にでき、しかも湯本の象徴・箱根湯本駅も改築工事中。この近辺の景観、数年後がらりと変わるのでしょう。
変わることは悪いことではない。それは分かっているけれど…でもどこか腑に落ちない。神奈川県民として、幼少期より親しんだ温泉街の変化に対し、やるせない思いを抑えることができませんでした。
38_s3.jpgでも、そんな私を救ってくれたものがありました。芦ノ湖畔のとある喫茶店で食した、ランチプレート。スパゲティ、ハンバーグ、フライが一つの皿に盛られ、とびきり美味しいわけじゃないけれど、ひとつひとつ手作りで作られていることがわかる実直な味で、妙に心に染みました。店構えやメニューの年季から言って、かなりの歴史を持つ店らしく、その頃からこういう食を変わらず提供してきたことが感じられました。
変わらないことの美しさ。その価値を、芦ノ湖畔で一人かみしめた初夏でありました。
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