おいしいコーヒーの世界へ、マスターがご案内します
これほど店主に“職人”を感じる喫茶店を見たことがない。入り口は行ってすぐ横にある、コーヒー豆の焙煎機。そこから立ち込める香ばしく、深みのある芳醇な香り。静かに訪れるものを落ち着かせてくれる、実直な佇まいの店内。カウンター越しにずらりと並ぶ、コーヒー豆の入った瓶。カウンター中央の、煮え立つポット。全てが絵になる。そして男の仕事場の空気がする。そして、コーヒーを注文してから作業に移る、林さんに身のこなし。コーヒーを入れるという動作が、これほど洗練されているとは…まさしく“職人”。そんな見とれている私に林さんがぼそっとひとこと。「14年もやっていれば、嫌でもこれぐらい出来るようになるよ」。根っからの喫茶店好きだった林さん。そのため、コーヒーを今のスタイルで入れる事は、昔からできたと言う。しかし、いざ喫茶店をやろうと思ったとき、改めて修業に出る選択をする。「元々コーヒーは入れられたけれど、プロとしてやるなら、徹底的に技術を磨かなきゃダメでしょう(同)」。9年の修業期間を経て、この地に店をオープン。修業した年月と同年、ひたすらここでコーヒーを入れ続けてきた。「最近安くて気軽に利用できるコーヒーチェーンが増えた。それはそれでいいと思う。でも、やっぱり手がかかって、美味しいコーヒーが飲める場所が、俺は好きなんだよね(同)」。取材時に出していただいた一杯のコーヒーに、その想いはしっかりと抽出されていた。