目黒を“住む”という視点で眺めたとき、ぜひとも注目して欲しいのは、南部の一帯である。目黒という地名からすると、とかく中目黒、祐天寺、自由が丘など流行の街に目が行きがちであるが、この品川区、大田区等と隣接する南部地域では、目黒という都会的なイメージに加え、古くからある住まいとしての雰囲気、佇まい――誤解を恐れずに言えば、目黒の下町情緒――をたっぷりと感じることができる。しかもこの一帯、それぞれ“住む”場所としての独自の特徴、特色を持った街並が組み合わさることで、形成されている。
まず、品川区と隣接する西小山(西小山は正式には品川区だが、あえて今回は目黒のくくりで)。この地域の象徴とも言うべき存在が、目黒区、品川区と二分する、駅前から伸びる商店街。全長50mと決して長くはないが、八百屋、肉屋、食料品店、菓子店など生活に密着した商店が密集。手ごろな値段であらゆるものが揃う、まさに西小山の生活を支える場所。何よりこの商店街、常に活気に満ち溢れており、住む人々に日々の活力を与えてくれる存在でもある。次に大田区と隣接する、洗足。正直、右隣の西小山と比べると、便利さ、活気は若干遅れを取る部分はあるが、その分“住まい”としての落ち着き、余裕がたっぷりと感じられる。周辺は昔ながらの街並が今も色濃く残っており、長年この地に住み続けているであろう人々が、自分のペースで行き交い、自分のスタイルで生活をしている。そのゆとりある佇まいは、ちょっと憧れてしまう。そしてこれまた大田区と隣接する街、大岡山。ここは東急目黒線、大井町線が交差する交通の要所でありながら、北口に伸びる商店街を象徴に、昔ながらの住む人々の活気、活力が今も変わらず満ち溢れている。南口には東京工業大学もあり、若者の息づく雰囲気も漂い、老若男女の“住”の空間として、しっかりとその地位を確立している。
最後に、西小山、洗足、大岡山を北側に沿うように広がる、この地域随一の高級住宅地・碑文谷。目黒通りと環七通りの交差する場所にありながら、一歩入るとしっとりと落ち着いた風情が漂う――そこに点在する、風格ある住宅、そして由緒正しい教会、神社、寺、竹林。まさしく住む街の一つの完成形といえよう。
さて、あなたはどの場所を“住む”街として選ぶだろうか――正直、迷うと思う。だが、そうやって悩むことも、目黒南部に住む楽しみ方の一つ。 |